遺伝性脊髄小脳変性症(SCA3型・6型)の治験参加 2020.9

遺伝性脊髄小脳変性症、この自分達が現在抱えている難病については、意外と当人自身が知らないことが多い。

一つには今までこの病気は治療薬もない難病で、どうせ悪くなる一方で良くなることなどないという諦めみたいなものが根底にあり、それがどちらかといえば自暴自棄に陥りやすい状況を作り出していたように思える。

ために自分達が遭遇している「病」に直接向き合い、相手を深く知り、克服してやろうという意欲、熱意を削ぎ、いわば諦めに似た精神状態に陥っている人が多いように思う。

母や叔母達がそうだったし、祖母に至っては訳もわからずに逝った。

常々思っていたのだが、この自らが陥っている、まるで袋小路のような出口の見えない状況にただ手をこまねいているだけでいいのだろうか。

つまり、自分だけが何故?と自分だけの殻に閉じこもるのではなく、この問題は他者と共有し、解決への道を探すべきではないか。

他者とは当然家族や知人友人ということになると思うが、実際のところは家族にすら打ち明けられないこともあるようだ。

これは非常に残念なことで、そのことが難病に対する一般の人達の認知度、理解度を弱め、ひいては治療法の進歩を阻んでいるようにすら思える。

実際、友人知人に自分の患っている難病「脊髄小脳変性症」のことを話しても、十中八九は初めて聞く病名だと言う。

私は私の残り少ない自分の晩年のライフワークはこの難病と向き合うことだと思っている。

そのことが子や孫の幸せにつながると確信している。

そして、その克服のため自分の出来る範囲のことはやってみようと思う。

それが「治験」に参加してみようと思い立った理由である。

リハビリは自分のため、治験参加は子や孫のためと割り切っているつもりだ。

約2年前この難病が元で酔った帰り玄関階段で転倒、踝骨折で1か月入院、それから退院後1年半以上毎日平均1万歩以上歩くのが日課となった。

効果はそれなりにはあったと確信して今も続けている。

あれ以来病状は少し進行し、ふらつきは進み転びやすくなった。しかし転倒には至らず踏ん張れるようになった。

就寝時のコムラ返りがなくなり、痙攣痛も少なく睡眠が取れるようになった。

体重が5キロほど減り体のふらつきと歩行に問題はあるが、体調は良い。

 この病気を患ったせいか、良い悪いは別にして今までの行き当たりばったりの生き方でなく、少しは残りの人生の事を考えるようになった気がする。

 そう思い始めた頃、思わぬ大きな転換期が訪れた。

 遺伝性「脊髄小脳変性症」の症状進行を止める新薬の登場である。

 ここ数年で急速に発達した再生細胞医療のお蔭だとも聞いた。

 さてこのリプロセル社が開発中のステムカイマルという新薬だが、今第1段階の治験(安全確認)が名古屋大学で終わり、第2段階の治験(効果確認)を全国10医療機関で実施すべく治験参加者の絞り込みをやっている。

 現在の募集状況は知らないが、治験参加者募集の情報を私が初めて入手したのが5月、全国10か所の医療機関の決定と治験募集が開始されたのが8月。

 初め新潟大学に申し込んだが、すでに治験参加者決定済みで、第2候補の信州大学に申込みし直したところ、まだ空きがあるというので8月28日信州大学医学部付属病院へ出向き担当医の検診、面接を受け「良」との返事を受け、帰って家族の賛同を得、9月、信州大学医学部付属病院での治験参加が決まった。

 治験参加者数は10医療機関合計で50名。全国の患者数は約1万数千人。

治験参加者のなるには条件がある。

治験対象者は比較的軽度な者に限り、適合検査と主治医の紹介状がいる。

主治医が適性を判断し治験対象機関へ推薦、紹介状を書いてくれる。

受理されればその治験実施病院へ出向き、担当医師による再検査・面接を経た後諸条件を提示され、良ければ応諾し決定される。

このステムカイマルという薬は症状を改善薬ではない。進行を止める薬だ。症状を現在の症状でストップさせる薬で、治す薬ではないということは既に症状が出ている患者は良くならずそのままの状態ということだ。

朗報である。「朗報」と言い切るのは、この薬の公認が子、孫へと連なる子孫への負の連鎖を断ち切られるかもしれないという期待からだ。

はっきり言って私はこの新薬の自身への効果はそれほど期待していない。

勿論運よく症状にストップがかかればそれに越したことはないが、別になくとも余命はリハビリで何とかしのいでいければと思っている。

もしこの薬が良薬として日の目を見ることが出来たら最高だと思う。

そうすれば、遺伝子検査も積極的に受ければいいと思う。

病気の遺伝子がなければ幸い。仮にあっても症状を抑え込む薬がある。

少しでも症状らしきものが出た時点で投与すれば、そこでストップする。

場合によっては症状が出る前に投与すればその時点で完全に封じ込める。

健常児のままということも可能かもしれない。

陰湿な話題が明るい話題に変貌する。こんな朗報はない。

 

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